虎に翼 家族システム論の視点から


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家族システム理論では、家族を1つのシステムとみなし、その中に夫婦・親子・きょうだいといったサブシステムが存在します。

家族システムの特徴として

①家族は、複数の個人が相互に結びつき構成するシステムである。

②サブシステムの構造化に応じて、勢力の配分と階層ができる。

③家族内では個人の自立性に諸段階がある。

④家族内の相互作用・コミュニケーションには、独特の構造と過程がある。

⑤家族システムは時間の経過に伴って変化するが、その過程には諸段階がある。(岡堂1992)

と述べられています。

今回はこの家族システム論の視点から虎に翼を見ていきたいと思います。

猪爪家が1つの家族システムです。その中に夫婦サブシステム、親子サブシステム、兄弟サブシステムが混在しています。

今週のお話しでは寅子と花江や直明との間に溝が出来てしまっていました。私は寅子の母のはるが生きていたら、このような問題は起きなかったのではないかと思います。

はるは家族の潤滑油でした。つまりこの家族システムの中では重要な役割を担っていました。嫁の花江からも信頼されていました。はるが健在の頃は、はると寅子、はると花江、はると直明の親子サブシステムが正常に機能していました。今思うと兄弟サブシステムは少し弱い部分もあったと思います。今週のエピソードはそう思わせる内容だったからです。その分は、はるの存在を軸とした親子サブシステムによって補われていたと思われます。

寅子は、はるが健在な頃から仕事一筋でした。はるが、夫を亡くした寅子と優未を案じたかららそうするのが良いと判断したのでしょう。優未の養育もはるが親子サブシステムの一環として当然のこととして行っていました。

花江もはるとともに家事全般と優未の養育に携わってきました。それは花江とはるの親子サブシステムが良好だからこそ問題がなかったのでしょう。

しかしはるが他界しそれぞれとの親子サブシステムは消滅し、兄弟サブシステムとそれぞれの子どもとの親子サブシステムが残りました。

花江ははるの行ってきた家事一切を取り仕切ることになりました。今まで2人で行ってきたことを1人でしなければならないわけで、かなりの負担です。また優未の養育も今まで通り、仕事一筋の寅子に代わって行っていました。

ただ優未の立場からすれば、花江がいくら我が子同然に関わったとしても、寅子という本当の母がいるわけです。花江にしても寅子の存在があるわけで、我が子と100%同じに接することはできません。

直明は、はるがいなくなったことによる家族システムの変化に気が付いていました。

花江は、はるのいなくなった穴を埋めるべく、懸命になりすぎて、家族システムの変化に気が付く余裕はありませんでした。

優未は祖母を母親の代わりとして心を許してきましたが、忙しい伯母に負担をかけてはいけないと我慢していました。つまり優未も家族システムの変化に気が付いていました。それがテストの点数を改ざんするという行動に繋がりました。

寅子は今まで通り仕事一筋ですから、家族システムの変化に気がつくことが出来ませんでした。当時は、今以上に男社会だったでしょうし、その中で力を発揮することはは並大抵のことではなかったでしょう。彼女が家族システムの変化に気がつかなかったのはある意味仕方なかったかもしれません。

そうは言っても、直明と寅子の兄弟サブシステムが良好であれば、直明が寅子に何か助言をすることも出来たでしょうし、花江と寅子の兄弟サブシステムが機能していれば、早い段階で意志疎通が取れたかもしれません。そうすれば優未の問題にもっと早く気が付くことも出来たでしょう。

猪爪家の場合は、はるの存在が大きすぎたのです。親子サブシステムが強すぎて兄弟サブシステムが弱かったのです。だからバランスを崩してしまったのだと思うのです。

猪爪家に限らず、入院などいろいろな事情で家族の構成員に変化が生じれば、家族システムのバランスに影響が出ます。その結果、問題が出現することもよくあることです。

お互いに自分のことに精一杯になるのではなく、周りの状況を見極めて、変化に適応していくことが必要です。

しかし当事者になれば、そううまくはいかないかもしれません。特に日本人は「言わなくても察するべきである。気がつくことが良いこと。」という風潮があります。気が付かない相手に対して「気が付いて欲しい。察して欲しい。」と求めるのではなく、して欲しいことをアサーティブに伝えること、そしてどんな時でも、相手ではなく、自分がどう変化していくかに焦点をあてて、自分軸で生きることが大切だと思います。