今回は女性における化粧の必要性です。
小さな男の子が電車や車などに興味を持つ一方、女の子はぬいぐるみや人形に興味を持ちます。人形の髪の毛を触ったり、メイクをしたりして遊びます。
先日YouTubeでバタやんチャンネルを見ていました。娘さんが子ども用のメイク道具を使ってお母さんをお化粧してあげていました。これを見て、女性がメイクが好きなのは、持って生まれた特性だと思いました。
化粧にはさまざまな効果があると言われています。例えば化粧は気分を高揚させる効果があります。また自己表現の意味もあると思います。自己表現は人間が自己実現を行っていく上で重要な役割でもあります。
さらに化粧を行うことは、自分を大切にすることに繋がります。
アメリカの心理学者マズローは「人間の欲求を5つの段階に分類し、最も低い段階から順に生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認欲求、自己実現の欲求があり、ある欲求が満たされると次の欲求が表れるという法則に基づいている。」とする欲求5段開設を提唱しました。
①生理的欲求は生命維持に不可欠な必要最低限な欲求のことです。例えば食欲・寝たいなど。
②安全の欲求は身体的にも経済的にも安全で安定した環境で過ごしたいという欲求です。
③所属と愛の欲求は社会的集団(会社や学校など)に所属して安心したいという欲求です。人間はどこかに所属して、他者との相互理解により満たされていくものです。人は自分を受け入れてくれる他者が必要と考えられています。
④承認欲求は社会的集団に所属し、その中で自分の能力を認められたい、高く評価されたいというものです。
⑤自己実現の欲求は自分にしかできないことを行って、自分らしく生きていきたいというものです。
現在の日本では①の生理的欲求が満たされないということはないでしょう。
しかし②の安全の欲求以降は必ずしも満たされるとは限りません。例えば、家庭環境によっては脅かされかねません。経済的・身体的には満たされていたとしても、心理的に問題があれば、満たされません。そうなると③④⑤の欲求を充足しにくくなってきます。
ここについて解説していきます。
古宮昇著「こころの症状はどう生まれるのか」では
”人は親の無条件の愛情を求める強烈な衝動を持って生まれてきます。しかし完璧な親はいませんし、完璧な子育てはありません。子どもはそれらの衝動が大なり小なり満たされることなく育ちます。そしてその程度に応じて親から愛されない孤独感と悲しみを感じます。また子どもは親から世話をしてもらわなければ生きてゆけませんから親から愛されないことは激しい恐怖をも引き起こします。
人はまた自己実現を求める激しい衝動も備えて生まれます。それはいのちの持つ成長力であり自己治癒力でもあります。ところが自己実現を求める機会が保障されなければ成長や成功の喜びは得られません。
また自己実現を求める機会を親が許さない時「お父さん・お母さんは自分の気持ちを分かってくれない。尊重してくれない。」と感じ、愛してくれない傷つきとして体験され、無条件に愛してもらえない孤独感・悲しさ・恐怖を感じます。
親から無条件の愛を受け取れなかったと実感している人ほど自分は愛される価値がないと信じて育ち、それが深く激しい劣等感・自己無価値観の一つの源になります。また幼い頃に親の愛情を身体的に求める衝動が十分に満たされなければ成長してからもその衝動の充足を求め続けますから、自分の中のその幼児的な衝動に対して罪悪感を感じ、そんな衝動を持つ自分自身への嫌悪感を抱きます。”とあります。
そう考えると親の影響はとても大きく、小さな頃からの親の発言は子どもにとって絶対的信念のようなものを作り出します。その呪縛から逃れられず、縛られてしまうことも考えられます。いくら他人が違うことを言ったとしても「そんなわけがない。」と信頼することができなくなります。他人だけではなく、自分を信頼することすら難しくなってきます。
マズローの③の所属の愛の欲求は他人との相互理解です。自分も他人もお互いに認め合い、愛を示しあうことが必要です。しかし、自分も他人も信頼していませんから、それ以上前に進むことができません。
ここで必要になってくるのは、まずは自分を大切にし、認めてあげることです。自己承認が必要です。親が満たしてくれなかったものを自分で満たしていくのです。
女性は特に自分のことは後回しにしがちです。
例えば、自分を大切にする気持ちがなければ、化粧水や乳液を塗ったりする気持ちにはなれないでしょう。
ゆっくり丁寧に肌をいたわってあげることは、自分自身を大切に扱っていることになります。
肌と向き合って、肌と対話して必要な成分を補ってあげます。すると肌が応えてくれます。歳を重ねると、さまざまなエイジングサインに劣等感を持つこともあるでしょう。しかし肌が改善すると、少し自信を取り戻すことができます。
自分に合うファンデーションやメイクでさらに自分への自信を取り戻すことが出来るでしょう。またメイクは自己表現の1つです。紙に絵を描くように、その日の気分でアイシャドウやリップを選ぶと気分が、高揚して外出が楽しくなります。それらにより社会集団との積極的な関わりがしやすくなります。そのなかで他者との相互理解を繰り返すことで自己肯定感が高まり、自己承認が出来るようになるでしょう。
こういったことの繰り返しが、自己実現へとつながっていきます。
マズローは晩年に6段階目として自己超越の欲求があるとしました。自己実現の先にある自己超越は、利他的行動、つまり自己犠牲を顧みずに他人の利益を考え行動することを含んでいるそうです。どちらにしても人は外界との接触のなかで成長していきます。
化粧によって外界との関わりが持ちやすくなるのなら、おばあちゃんになってもきれいな肌で素敵なメイクはしていきたいと思います。